アンティーク家具の引き出しの表面を再塗装(塗り替え)です。

こんばんは。

今回はアンティーク家具の引き出しの塗り替えのご依頼です。

引き出しは天板と同様、よく手に触れるところです。
当然使っていれば色がいい感じに落ちてきます。
ですがこのお客様の場合は乾燥によって塗装が劣化してしまったようです。


こうなってしまっては上にきれいな塗装をのせたとしても
そのうちに根こそぎ剥がれてきてしまいます。

このように塗装面がぽろぽろ取れてきてしまっている場合は
一度その劣化している塗装を取り除かなくてはなりません。

取り除くときに使うのが
メス (シェラックニスの溶剤でアルコール)です。

スチールウールにメスをつけ、劣化した塗面をきれいに落とします。

このときに気をつけなくてはいけないのは劣化した塗面のみを取り除き
ベースの塗面が生きていればそれを落としてしまわないように注意することです。

シェラックニスは1度で塗装面ができるのではなく
何度も塗り重ねていくことで塗装面を構成していきます。

例えば塗装面が8層だったとしましょう。
水をこぼしてしまいしみになってしまった。

この場合すぐに塗り替えるということにはなりません。
メスを使って水が染み込んでしまったところを少しづつ落としていき
それが上から4層であれば残りの4層は生かして塗装をします。

こうすることでそのアンティーク家具の持っていた風合いを完全に取ることなく、なおかつ塗装作業の工程を少なく済ませることができ
お客様の出費を抑えることができます。

これがアンティーク家具の修復というものです。

ただこの場合ベースの部分まで塗装が劣化してしまっているので
やむなくしっかり塗装を剥がさなくてはいけません。
この作業で中途半端に塗装を残してしまうと塗装面に段差ができ
せっかく塗りなおしても汚い塗装になってしまいます。

風合いを落としてしまった以上ここからアンティーク家具の修復する者の腕の見せ所です。

続きはまた次回に

お楽しみに


アンティーク家具のブックケース(本棚)の鍵修理です。

こんばんは。

お客様よりお問い合わせメールが昨日夜にありました。

その内容は
ブックケースの鍵が開かなくなって中のものが取り出せなくて困っているとの事でした。

購入したアンティークショップに問い合わせた所
3月下旬まで手が回らないので待って欲しいと言われたそうです。

なぜ?
忙しいとそんなに待たせてよいのでしょうか?

仮にも自分の商品を購入していただいたお客様に対して
あまりにも粗雑な扱いですよね。
そんなことではお客様が離れていくのに・・・

購入したことがある別のアンティークショップにも問い合わせた所
色よい返事がいただけなかったようです。

その理由は自分の所で購入していない商品の直しはできないというのです。

なぜ自分の所で売った物しか修理してくれないのですかね?
非常に不思議です。

売りっぱなしで古くなったら新しいものを勧める、そんな売り方でよいのでしょうか?

少なくとも購入した方はそのアンティーク家具が気に入って購入し、
使い込んで不具合が出てきたから修理をお願いしたいと、
困っているとお客様が言っている以上それに答えることが売った者の責任ではないでしょうか?

私はどこのアンティークショップで買ったものであろうと関係ありません。
お客様が直して使いたいと言っている以上、できる限りそれを叶えてあげたいと考えています。

前置きが長かったですが

とにかく鍵が開かないのでなんとかして欲しいとの事でした。
お客様の家で確認したところ鍵が引っかかっているようです。

ブックケースやキャビネットなどの観音開きのものでよくおきるのが
置きぐるいというものです。

前面が大きな開口部になっているので躯体が床の状態によって歪んでしまい
鍵が正常に機能しなくなったり、扉が当たってしまったりするのです。

このお客様の場合も置きぐるいのため鍵が機能しなくなっていました。
それに機能しなくなっている鍵の内部も心配です。

しかし確認するには扉を開けなくてはいけません。

歪んで開かなくなったのですから、歪んでしまったのと逆の方向に歪ませてあげれば、、、

あら不思議!!!
扉のストッパーがはずれスーッと扉が開きました。

さてここからが本番です。
鍵のシリンダー(本体)がどうなっているのか確認しなくてはなりません。
シリンダーにキーを差し込んで何回か回しているうちに
シリンダー内の支柱が外れかけているのに気が付きました。
もしやと思いもう少し回していると案の定、その支柱は外れてしまったのです。この場の作業では音が出てしまうのため
お客様に了承を得て、持ち帰って修理することにいたしました。

持ち帰った鍵の様子はこんな感じです。

鍵の出たり、引っ込んだりするベロが斜めのなってしまい
内部のばねが完全に外れてしまっている様です。
このままでは直せないので一度蓋をはずします。

右上に見ている小さい支柱が外れてしまった為に鍵の内部がばらばらになってしまったのです。
この支柱をベースの部分に取り付けなくてはいけません。

元々古い鍵は溶接はせず、接合部の先を叩いて金属を広げてくっつけて取れないようにしているものが多いので、この鍵もそういう構造でした。(分かりにくい説明ですかね・・・)

まず支柱が抜けてしまったということはその支柱が入っていた穴が広がってしまったということです。広がったといっても盛りがって支柱が外れてしまったなら良いのですが、今回は穴が広がって外れてしまったのでかなり厄介です。

叩いてベースの接合部を平らにします。
盛り上がって外れたのであればこれで支柱より穴の口が狭くなって支柱を入れて叩けばそれで直るのですが・・・
穴が広がってしまっているのを小さくすることは難しく・・・
でも何とか支柱を叩きいれて固定することに成功しました。

その日のうちに、お客様に修理できた旨を報告し、納品に向かうことにしました。
ご自宅に到着し、鍵を取り付けましたが、何か少し嫌な予感が・・・
やはり支柱が外れてしまったのです。
広がった穴を小さくするのは難しかったようです。

お客様のご説明し、直すなら今後壊れないようにして欲しいということでお客様の了解を得て、シリンダーの交換をさせていただくことになりました。
念のため替えのシリンダーを持ってきていたのでそれと交換です。

替えのシリンダーの方が少し大きかったため扉の鍵の掘り込みをノミを使って大きさに合わせて掘り込みます。

シリンダーのベロも元の物よりも厚みがあったので
反対側のベロの受けも掘り込みます。

シリンダーを取り付け、鍵の開閉を確認したら、掘り込んだ所にオイルステインで着色します。

これで作業は終了です。

 

お客様にお時間を取らせてしまったのに、おいしいコーヒーをご馳走になり
すごくうれしかったです。

ありがとうございました。

今日はこの辺で
また次回をお楽しみに。


アンティーク家具の脚折れ修復 その4

こんばんは。

気持ちの良い天気でしたね。
昼寝は気持ちのいいものです。
あーゆっくり昼寝がしたい・・・

本題に入りましょう。
前回はアンティーク家具の脚折れの修復部分に
オイルステインを入れるところまでお話しました。

今回はいよいよ
フィニッシュです。

脚折れの周辺をペーパーで均したり、パテを埋めた所は
オイルステインでも色が入りきりません。

そこでその部分だけ
専用の顔料(粉上の着色剤です)をシェラックニスで溶いたもので
色付けしていきます。

私はリタッチと呼んでいますが
正式には、カラーブラインディングという技法です

この顔料にはたくさんの色があります。
基本的には6種類を主体に使っていきます。
単独で使ったり、何種類かを混ぜたりしてアンティーク家具の独特の色合いを出していきます。

シェラックニスで溶く際に粉の量が多すぎると木目を消してしまう厚ぼったい塗装になってしまうので、薄く溶いたものを何度も塗り重ねるようにします。
薄く塗り重ねることによって透明感のある塗装に仕上がります。

ただ何度も塗り重ねるには乾かす時間を取らなくてはなりません。
通常シェラックニスを仕上げで塗るときはメスと呼ばれる溶剤でほんの少し薄めて塗ります。
このメスは単なるアルコールです。
アルコールは揮発性(簡単に言うと乾きやすい)が高くシェラックニスの乾燥を少し助けます。
この揮発性が高いことを利用してリタッチの際には1:1の割合でシェラックニスとメスとを入れた塗料を使用します。
そうすることで乾燥時間が短くでき何度も塗り重ねることができるのです。

リタッチ作業を終えたら
十分に乾かします。
乾いた所でリタッチ箇所をケンマロンで表面を軽く均します。
なぜ均すかというと
顔料は粉状だとお話しました。
粉をシェラックニスに溶いて塗ったのですが
乾燥すると粉のざらつきが表面に残ってしまうのです。
そのざらつきを取っておくことで仕上げのニスをこの後入れたときに
滑らかな塗面となるのです。

ただ強く擦りすぎてしまうとせっかくのリタッチが剥げてしまうので
ソフトタッチでやらなくてはいけません。

ケンマロンで軽く均したら
埃を布でふき取ります。

いよいよシェラックニスで仕上げます。

シェラックニスは刷毛に適量をつけて
むらにならないように、ニスだれしないように、かすれないように
丁寧に塗ります。

よく乾燥させたら
ワックスをかけて終了です。

ここまでの
作業のおさらいです。

折れのカット、ダボいれ     25分 
脚の締めなおし、パテ埋め    20分
ペーパー、ケンマロンでの磨き   2分
オイルステインいれ、ふき取り   2分
リタッチ             3分
ニスいれ             2分
ワックス             3分

乾燥時間は作用時間に含まれませんから
実作業で1時間です。

料金は5250円(税込み)です。

脚の折れの状態によっては時間の前後はあります。

もしこのようなアンティーク家具の脚折れの修復のご依頼がありましたら

詳しくは  http://oku-antiques.com/

ご相談は  info@oku-antiques.com

までお気軽にご相談下さい。
お待ちしております。

次回も実例をお話したいと思います。

お楽しみに